突然ですが、あなたは訴えられたことはありますか?
「人を犯罪者扱いしないでください!」と怒られてしまいそうですね。もちろん私も訴えられたことはありません。これまでも、これからも、社会のルールを守って正しく生きていくつもりですから、今後も訴えらえることなどあるはずもない・・・そう思っていたのですが、このセミナーを受講して考えが変わりました。
2019年10月29日午後3時、横浜会場にて著作権・商標権セミナーがスタートしました。講師は大谷元特許事務所の代表でいらっしゃいます大谷先生です(ホームページはこちら:大谷元特許事務所)。
セミナーを受講してみてまず感じたことは、「ビジネスをされている方は特に要注意だなー」ということです。飲食店や小売店を営んでいらっしゃる個人事業主から法人の大企業まで、明日にも裁判を起こされてしまうかもしれません(これ、冗談ではないんです)。
ちなみにスティーブジョブズやiphoneで有名なアップル社は、訴えられないために毎年1億円を支払っています。(参照記事はこちら:Wikipedia)
なぜ訴えられてしまうのか?
そうです、それが今回のセミナーで学べる著作権と商標権です。ここでは公にできませんが、セミナー中にある企業が会社名を変更せざるを得なくなった事例が飛び出し、受講生からは大きなため息がもれていました。
特にこのような方は危険ですよ。
- ウチは誠実な会社、盗作はしてないから大丈夫
- 他社よりもウチの方が古いんだから権利はこっちにある
- 信頼できるデザイナーに任せているから心配ない
セミナーで公開された実例では、このような正しく真っ当に営業していた事業者が裁判に敗訴しています。何も悪いことはしていません。中には何十年もコツコツと営業されてきた老舗もありました。
しかし、これらの訴えられた(そして莫大なお金を失った)事業者にはある共通点がありました。それは「著作権や商標権について知らなかった」ということです。名前くらいは知っていたかもしれませんが、詳しく知らなかったために損害賠償請求や差し止め請求を受けてしまったのです。
もしあなたのお店や会社が訴えられてしまったらどうなるでしょうか?対応するためにはかなりの費用がかかります。有能な経営者なら売上と同じくらい費用にも敏感ですよね?
- 弁護士と弁理士を雇って裁判し続ける費用
- 店名や社名の入ったすべてのモノを処分する費用
- 新しい店名や社名の入ったモノを新しく製作する費用
- ネット上に残ったデータをすべて削除する人的費用
- 顧客への説明と告知に必要な費用
- 新しいブランドイメージを確立するための費用
数えきれないほどの項目に対応しなければいけません。お金、労力、信用を失います。今現在、莫大な余剰資金があれば耐えられるかもしれませんが、これほどの費用を突然負担することになると、一気に会社が傾いてしまうというケースも出てくるでしょうね。
もし訴えられたらどうしますか?
例えば商標権の侵害で訴えられてしまったら、いったいどうすればいいのでしょうか?
講師である弁理士の大谷先生は「今すぐ商標の使用を止めてください」と言います。商標権を犯してしまった状態を人間の体で例えるなら、大動脈が切れた状態なんだそうです。兎にも角にも今すぐ出血を止めなければ死にますよ・・・という危機的状況です。
なぜここまで商標権の侵害が恐ろしいのか?
少しだけセミナー内容を公開すると、それは商標権侵害の賠償額が時間あたりで算出されることもあり、そうなると時間が経過するほどに賠償額が膨れ上がってしまうからです。侵害している状態が続けば続くほど賠償額が増えていていきます。だからこそ今すぐ止血しなければならないんですね。
大谷先生に「今からできることは何ですか?」と聞いてみたところ、「今すぐ自分のお店や会社で使用している名称やロゴなどが商標権を侵害していないか調べること」なんだそうです(もし侵害していることが分かったらゾッとしますが・・・)。
また、これから新商品をリリースしたりイベントを立ち上げたりする際には、ぜひ商標権について調べてから着手することをおすすめしたいともおっしゃっていました(セミナーでは商標の調べ方についての講義もありました)。
もし商品をリリースしてから商標権を侵害していることが発覚すると、信用を失うばかりか、その商品を製作販売するまでにかかった費用がすべてムダになってしまいます。
著作権には誤解が潜んでいました
デザイナーに仕事を外注したことはありますか?例えばコンテンツを自社で製作してパッケージのデザインを依頼するようなケースです。他にも、イラストやロゴなどのデザインを製作してもらい、自社のブランディングに活用されている方もいらっしゃると思います。
ところで、デザイン会社に製作してもらい、お金を支払ってデザインを納品してもらった場合、そのデザインの権利は誰が持っているのか考えたことがありましたでしょうか?
デザインを発注した側は「お金を払ってデザインを買ったんだからウチが権利を持っているに決まっているよ」と考える方が多いのではないでしょうか?
一方では、作曲家のように作品を売っているにもかかわらず、作品の権利を持ち続けているケースもありますよね?似たような曲を世の中に発表すると「盗作だ!」と訴えられてしまいます。
これは講義の中で詳しく教えていただいたのですが、著作権は「著作人格権」と「著作財産権」の二つを合わせた総称なので、それゆえに権利が誰にあるのかが分かりにくくなっているとのことでした。
そのため、デザインを外注した側は「この権利はウチが持っているんだから」と勝手にデザインを改変してしまう、受注したデザイン会社は「権利は製作者にあるんだから勝手に改変するな」と争われることが多いんだそうです。
- 買った側に権利が移るのか?
- 売っても権利は残るのか?
講義ではこのあたりの理解にかなりの時間をさいていただきました。
法律問題は難解です
莫大な知識がなければ著作権や商標権への対応が難しいのも事実です。だからこそ超難関の国家資格に合格した法律家が必要なんですね。
ちなみに弁理士になるためにはその超難関である弁理士試験に合格しなければいけません。本年度は200人くらいしか合格できないだろうというお話もありました。それでは知識さえあれば白黒はっきりと解決するのでしょうか?
ここが本当の問題です。
講師の大谷先生によると(特に商標権において)、「権利を侵害しているかどうか判断することが最も難しい」とのことでした。確かに二つの製作物を並べてみて「似ている」「似ていない」という基準はどのように決めたらいいのか分かりませんよね?
冒頭でアイホン株式会社にアップル社が毎年1億円の使用料を支払っているというお話をしました。「アイホン」と「iphone」ではカタカナとアルファベットという違いがあるので似ているとは感じませんよね?それでも権利による使用料が発生しています。
似ていると判断するのか、別のものと判断するのか、その基準はプロの法律家にも難しいところなんだそうです。
それではいったいどうすれば?
実は、講師の大谷先生は弁理士資格を保持しているだけでなく、この国家資格の試験員として弁理士試験の採点もしていらっしゃいます。数々の事例を経験されてきたベテランの弁理士さんなんですね。
多数の事例を経験し、数々の判例を見てこられた大谷先生は「このあたりなら大丈夫でしょう」「これは危険です!今すぐ使用を止めてください」という自身の体験を基にした判断基準をお持ちです。
さらに「このままでは権利を侵害しますが、このように変えれば大丈夫ですよ」といったアドバイスまでいただけます。実際に大谷先生のアドバイス通りに特許庁へ届け出をして、権利の侵害で訴えられずに済んだという方もたくさんいらっしゃいます。
もし商標について学びたい、相談したいという方は(次回の開催時期は未定ですが)著作権・商標権セミナーに参加されることをおすすめします。企業であれば、大谷先生を顧問として迎え入れることで大きな損失に備えることができるでしょうね。
以上、セミナーレビューでした!
ライター:ウエヤマ(SS会事務局)